レインドロップス


by てんてんこまる
 髪を撫でて、私の長い髪を撫でて、もうこれ以上伝える方法はないというく
らい大切に大切に抱きしめていました。もう、この人なしならどうでもいいと
思えるような恋でした。
 彼は、普通の人の十倍の速さで、時が過ぎていく病におかされていました。
そして、わたしといるために嘘をつきました。その嘘はとても、愛らしい嘘、
その嘘がなければどうにもならないと彼は思っていたのでした。
 雨が降ってきて、雨が振ってきて、雨は、私たちの行く手を阻むかのように
でも、そうしながら、私たちをかくしてくれていたのでした。それで、私たち
は、ますます強く寄り添って寄り添って、手に手を取りあい走っていきました。
もう二度と離れないと約束して、それからは、どこへいくのも一緒でした。
 2人でいると、時が過ぎるのが十倍にも感じるので、時の過ぎていく速さは、
二十倍にもなりました。でも、もう2人には、そんなことはどうでもよく、私
は泣き虫なので辛い時はちょっぴり泣きましたが、彼はいつでも笑っているの
でした。彼が笑っていれば、私は、安心して生きていくことができる。
 時は、あっという間。2人の終わりは、あまりにもあっけなく訪れました。
彼は、最後に笑って、「おまえ、愛しているよ。」と言いました。
 雨が降って、2人をなぐさめました。
F I N

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