のえのえぷーの真実


by てんてんこまる
 「盆と正月を一ぺんに集めた」ような笑い声を持つ、こまるちゃん。もっと
大声で笑うだけでもよかったのに、はっとした顔つきになりました。この時起
こったのです。のえのぷーへの疑惑が。

 アイスクリン屋のサクラが遊びに参りましたが、のえのえぷーへの疑惑で頭
がいっぱいのこまるちゃん、サクラのアリスクリンの誘惑にも負けないのでし
た。サクラんちのアイスクリンはほかのよりだいぶいい。ダイヤモンドが入っ
ていてうまい。けれど、サクラんちのアイスクリンは夏しか売っていないので
した。

 こまるちゃんは足の指の爪を10本とも、別の色に染めている。夜ともなる
と靴を脱いで、アスファルトの上を歩く。夕日が落ちて、こまるちゃんたら、
すぐにも家に帰ろうかと思いました。

 すると、その時、向こうの歩道にたけさんがいたのです。たけさんは降る桜
の花びらをいくどもいくども、たけさんの竹ぼうきで集めていたのでした。こ
まるちゃんはこういうたけさんを見たことがある。見て涙が出そうになったこ
とがある。

 「のえのえぷーなんて、そんなにいいもんじゃないよ。」とたけさんは言う。
のえのえぷーをさりげなく言ってしまうたけさんを、こまるちゃんはいつもう
らやましく思っていたのでした。そうだ、のえのえぷーなんて、のえのえぷー
なんて、たいしていいもんじゃない。

 「あ、あれ、僕の流れ星だよ。」たけさんの流れ星は、すごく大きい。こま
るちゃんの今まで見てきた流れ星なんて、ものの目じゃない。それともこれが
本物の流れ星で、こまるちゃんが今まで見てたのは、星がすべっただけなのか
しら。たけさんといっしょなら星ウサギまでも見れる。

 そういうことが大切なんだ。大人になることが悲しいことだと。たけさんの
のえのえぷーのため息は、そう言っているのでした。のえのえぷーなんて、の
えのえぷーなんて、ちっともよかない。ちっともよかないとわかって、こまる
ちゃんは少しほっとしました。

 悲しいことは、これからたくさんあるかもしれない。けれど、のえのえぷー
の真実を知ってしまったこまるちゃんはこれからはもっと強く生きたい。強く
生きていこうと思うのでした。

F I N

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