M O O N


by てんてんこまる
 その晩、寝そびれたキキは、夜の散歩に出掛けた。
 静かすぎると眠れないもの。静かな静かな夜。キキはこの街で一番高い塔の
上にきた。ここで、月を見ながら眠ろうと思って。でも、今日の月はどうも変
な感じがする。何か、薄っぺらで今にもはがれそうなの。その薄い影にキキは
手を伸ばした。すると思わず、月はぺろっとはがれてしまった。
「どうしたの?」と聞くと、「悲しかったから。」と言った。
 悲しいことがあって、消えてしまったり、消えそうなくらい薄い影で歩いて
いる人をみかけることがあるだろう?もしキキが月をはがさなかったら、月は
消えてしまうところだったんだよ。
F I N

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