神様のこども


by てんてんこまる
 ある島に、一人ぽっちの娘がおりました。
 もう、長いこと、一人でしたので、いつからここにいるのか、なぜ、ここに
いるのかすっかり忘れてしまっていました。その娘は、黒く長い髪と、黒く澄
んだ瞳の大変美しい娘でした。
 ある時、娘が島に1本しかない木の上で考え事をしていると、一羽の鳥がや
ってきました。鳥は娘にこう言うと、また青い空に飛んでいきました。
「君の毛は美しいけれども、君は”神サマのこども”に違いないから、きっと
神サマは、君を美しい白い鳥にしてくださいますよ。」
娘は、待っていました。ずっと待っていました。
 娘が鳥のことを忘れかけたころ、娘が島に一つしかない海辺の岩の上で考え
事をしていると、一匹の魚がやってきました。魚は娘にこう言うと、また青い
海に泳いでいきました。
「君の瞳は美しいけれども、あんたは”神サマのこども”に違いないから、き
っと神様は、あんたを青くって美しい魚にしてくださるんだよ。」
娘は待っていました。ずっと待っていました。
 でも、娘は”神サマのこども”ではありませんでした。
 待って、待って、待って、そして娘が死んでしまったとき、神様は娘を水色
の菊の花に変えました。光る涼しい野原で、たくさんの水色の菊の花の群れの
中で、満足気に風にゆれていました。
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